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俳句の創造へ 

今月の俳句Haikus this month

陸誌から

7月号、6月号、5月号 (このページの下にバックナンバーへのリンクあります)

中村和弘
2024年7月号
<松風>

ミサイルも杉の花粉も宙より来
人力車に油さしおり木下闇
登山道ほかには無しと黄菅咲く
人類に犬歯四本炎暑かな
溝泥は臭うほかなき暑さかな
風鈴の音色まつわり風邪ごこち
天然の闇を返せと亀ぞ鳴く
孵卵器に昼も夜もなし八月来
断腸は青葉若葉に掛けておく
松風も海亀の卵も青みたり

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2024年6月号
<山津波>

山津波跡のあらわに建国日
ぶよぶよの鶏卵産まれ春暑し
蚊柱のはや曇天に靡きおり
ゆつさゆつさと駝鳥の駆けて夏に入る
人柱あらわれそうな麦の秋
青嵐矮鶏の数羽が空を飛ぶ
荒田に蒲公英の黄の群立てり
暁闇のもつとも怖しほととぎす

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2024年5月号
<牛路(うしじ)>

花虻の羽音幽し睡魔来る
玄室の花鳥曇らせ霾ぼこり
大道は征途となりて霾(つちふれ)り
大阿蘇へ牛路まつすぐ草青む
海胆割けば棘いつせいに蠢(うごめ)けり
首塚に藜の花の茫と咲く
麦埃らしきを纏い木乃伊かな


陸・この20句 中村和弘選
2024年7月号

昼なかの闇に嵌れる藪椿      淺沼眞規子
キッチンカーの膨らんでいる桜時 佐藤禎子
宮殿の明るさに切る春キャベツ   佐々木貴子
花の塵逃げては戻る雀たち     堀 尚子
一群の墜落のごと四十雀      大野和加子
草餅を買う十三日の金曜日     渡部洋一
春の星フェリーで帰る家がある   前塚かいち
蓬莱島亀の睦める日永かな     根岸三恵子
槌音は海へはみ出し蝶生る     安住正子
紙風船畳にうつる影一色      森池義子
花は葉に廃線駅舎の竹箒      北原千枝
審査員離れて座り養花天      藤川夕海
永き日や曳船海を平らにす     土岐詳恵
焼却塔の窓に人影春の月      吉川孝子
段葛花の雲まを人の波       藤倉頼江
しやぼん玉この子等いつか月踏まむ 別所弘子
木道を飛び交ふ春の霰かな     池崎昌子
春眠し金平糖の精踊る       小田桐妙女
憲法記念日さいごの紙吹雪めく魚 三宅桃子 
朝日浴び霞の水平線探す      伊予 守

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2024年6月号

抱擁のかたちの立木夕朧      淺沼眞規子
長き死後米とぎ東風を聴き澄ます 吉本のぶこ
脚に傷ある三月の駅ピアノ     佐藤禎子
金輪際影は持たぬとミモザ咲く   石川真木子
筑波嶺の高みをめざしうなり凧   上田 桜
卒業の男子学生姫のよう      小川葉子
草も木も芽吹く音して村せわし   牧ひろし
涅槃図や心驕りを鎮めをり     小保方京司
うれしくて初蝶とまることしらず 鎌田史子
春塵の土より生まれ八十路かな   前塚かいち
囀のかたち円とも楕円とも     安住正子
風止みて目玉の動く蝌蚪の紐    北原千枝
朝東風に安房の菜花を抱へ来し   吉川孝子
春愁や危険なものにくわりんたう 山田和歌子
風立てば羽ばたきさうなスイートピー 桜田花音
這松に氷の花や朝日射す      伊藤岳栄
ふるさとの荷につく菜虫蝶となる 松川和子
冬囲解けば新たな影ありぬ     池崎昌子
春障子一穴に舞ふ光の子      佐野永子
雪解けの音に埋もれる神の廊下   正木むさを

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2024年5月号

立春や庭木の瘤をかぞへおく    小菅白藤
恐竜館の大き窓越し春の森      稲村茂樹
逃げ水を抜けて汽車ゆくひらひらと 吉本のぶこ
かの子忌や鳥は手ぶらで飛び立てり 瀬間陽子
安全旗まだらに雪の付着する     小竹ヒサ子
花待ちの石棺のようプレスセンター 小川葉子
約束の流氷を見ず逝きにけり     米川五山子
棒鱈を煮るに覚悟のやうなもの    堀 尚子
冬の鷺夕日の屋根に集ひをり     大野和加子
恋札の吹飛ぶ早さカルタ会      牧ひろし
関門の東西雛の夜の電燭       今田 克
初場所や烏帽子ひらり土俵下     本多洋子
鳥の恋縄でしばられ岩豆腐      石堂つね子
直売の菜花袋の中に咲く       及川明子
鉄筋を担げば弾む春近し       多摩川州
隆起せし海の響みや春の雪      安住正子
魚醤の樽転がつてをり寒朝市     山田和歌子
箸箱を鳴らして歩く花疲れ      三宅桃子
白く咲くモノクロ映画ミモザ館    白鳥青羽
音立てて雪来る街に歩みだす     清水りま

大石雄鬼
2024年7月号
<網戸の目>

わが映る硝子の奥の踏絵かな
海胆喰うて畑のやうに広がりぬ
下痢止めをのんで桑畑に入る
座布団をかるく重ねて西行忌
網戸の目くづれはじめて母の声
耳の穴は我に小さしシャワー浴ぶ
翡翠のやぶれしやうに夜になる

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2024年6月号
<世界遺産>

白鳩は灯りのごとし涅槃西風
接木して世界遺産をとほく見る
換気扇くつきりひらき入学す
非常囗よりも小さく潮干狩
人生のこまかい街や鳥交る
濁る手をもて盆栽を剪定す
スプレーの口のさびしき復活祭

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2024年5月号
<全力疾走>

房総の歯朶を跨いで歯朶を刈る
コート硬く生鮮食料品売場
雪山のほどけるやうに蜂舞へり
中古車の価格のでかし初蝶来
盆梅を裸体のやうに部屋に飾る
蜃気楼よりもとほくに生家かな
白木蓮全力疾走してきたり

【備考】
※通常、当月末までに掲載します。

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